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プロローグ
--ある日、宇宙からエイリアンがたくさんやってきた。
彼らは恐ろしい武器を使って、あっという間にたくさんの人を殺した。一ヶ月で世界人口を半分まで削った彼らは、生き残った人に対して『生き残りたくば我々の奴隷になれ』と言ってきた。それが宣戦布告だった。
とんでもない話だけど、エイリアンは交渉するつもりはなかったみたいで、その宣戦布告のあともどんどん人間を殺していく。人がどんどん減っていく。だから、人間にはもう他に道はないように思えた。
でも、そんなエイリアンに二人の男が立ち向かった。
一人は通称『ガジ』、とても勇敢な軍人さん、寡黙で冷静なリーダー。もう一人は通称『シャンル』、とても優しい警察官、朗らかで行動的なガジの相棒。
彼らは世界最強の男たちだった。
彼らはたった二人で敵の船に侵入し、敵の星に降り立ち、恐ろしいエイリアンをどんどん倒し、ついにはエイリアンの星をバッキバキに破壊した。母星を破壊されたエイリアンは「人間怖い」となって地球から撤退した。
この『宇宙戦争』の中でシャンルは命を落としたけど、彼の栄光は語り継がれるだろう――永遠に。
めでたしめでたし。
これが、『宇宙戦争』の終わりで『地球史』の始まり。今から十七年前の話だ。
宇宙戦争で七〇億人いた人間が一〇億人になっちゃって、地球もずたぼろになった。だから地球から国境線はなくされた。国を分けている余裕がなくなったからだ。
ボクは今の国境がなく、エイリアンが襲ってこない世界しか知らないから想像しか出来ないけど……ボク、本当に平和な時代に生まれたって思う。だって昔は国境でも戦争があったらしいし、国の中でも革命があったらしいし、物資が足りてない国とか、逆に多すぎる国とかあったらしい。……本当に今の世界になってよかった。ボクは心からそう思う。
この世界を作ってくれたガジとシャンルを尊敬している。彼らはボクにとっても、この世界にとって英雄だ。現に彼らを尊敬していない人はいないし、だから宇宙戦争後に生まれた子どもはみんな彼らの名前を貰っている。
というわけで、ボクの名前は『森下シャル』。シャンルから名前をもらったタイプってこと。
ボクは今年十四歳になる普通の男子中学生だ。ガジのようにもシャンルのようにもならぬまま、テキトーに大人になって、テキトーに死んでいくと思う。でも……そんなボクだけど……、ボクはボクなりに色々考えて、この夏休みはたくさん未知のことに挑戦をすることにした。その中の一つが『シャンル像を生で観る!』だ。
家族にも友人にも、『写真も動画もいくらでもネット上に転がっているのに、なんでわざわざ観に行くのか』と聞かれたけれど、答えは簡単。
「推しカプ聖地ゴフい……(※ゴフい:吐血が出るほど尊いこと。よく吐血するジャンルの腐女子が多用する動詞)」
もう一度言おう。
ボクの名前は『森下シャル』。
世界最強CPガジ×シャンル(通称:ガシャン、オンリーカプイベント名:最強の二人の鬼ごっこ)沼にどはまりしている腐男子だ。去年小説サークルデビューしたばかりのぺいぺい物書き、逆CP地雷、生存ルート地雷、ナマモノ本人突撃ヲタク地雷の、早く十八才になりたいボーイである。
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