02.崎谷樹の諦念

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02.崎谷樹の諦念

「崎谷ァ、お前……結構、やべぇな……」 「す、すいません……」 「や、あーしも悪かった。今はいいわ。  あとで宮代クンと一緒にやっといて」  ある意味怒られるよりキツイな……。  那須さんと二人がかり、複合機を動かそうとした揚げ句微動だにしない有様に呆れられてしまった。曰く「お前が来る前は女二人で動かしてた」とのこと、所謂男手として全く機能していないのは情けないが今すぐどうにか出来るものでもない。  俺は、運動が出来ない。  背はそこそこ伸びたものの、筋肉が目に見えるところに存在しない。日にさらす機会もないから、生っ白い腹の辺りはイカみたいだと自分で思っている。  性生活の充実、ネコとしてはそのほうが受けがいい一面もあったが、華奢な体型を好む向きには俺は背が高すぎるようだし、筋肉のないもやしを好んで選ぶのは痛めつけて楽しみたいから、という下種に当たってしまうこともあった。  加えて走るのも遅い、反射神経も鈍い。都会で働き生活している分にはそれほど困らないとの開き直りも、少し考え直したほうがいいのかもしれない。
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