No.2

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No.2

まったくもって引き出しに入るなんて、例の青い猫野郎の話じゃないか。あんな甘っちょろい救済なんかこの世には存在しないって、痛いくらい分かってる。 薄くて弾力のある物に入り込みキュッと止まった。車ならエアバッグが飛び出ているだろう。 口の中は胃液でいっぱいで、唇の端から漏れ出ている。体が重い。 固く閉じていた目を開けると、1立法メートル位の青色のゼリーみたいな物の中にいた。 昔住んでいた家のダイニングキッチンを斜めから見下ろすように浮かんでいる。 景色は水の中から空を見るように揺らいでいて、ブルーの濃淡だけで見える。絵画みたいだ。 8月の午前中、扇風機が首を振っている。 キッチンは整然と片付けられ、4人掛けのテーブルには母と男が座っている。机上には麦茶と水まんじゅうが2個ずつある。 時間を遡ってあの日を見ている、と直ぐに分かった。 「母さん、逃げろ! 早く逃げろ! ここから出せ! 出してくれ!!!」 ゼリーの中で叫んで暴れても母には届かないし、出ることもできない。
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