先生、お付き合いをしましょう!

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 夕映も最初から旭に恋愛感情を抱いていたわけではない。診察中に母親と世間話を織り交ぜて話している内に、夕映とは9つも歳が離れていると知ったし、夕映が小柄だということも相まって子供扱いされていることは明白だった。  いつも旭の周りには若くて綺麗な看護師がいて、そのクールな瞳とは裏腹に温かい笑みを浮かべる様子をまるでドラマを見るような感覚で見つめていた。  主治医の先生はすごくカッコイイお兄さん。そんな感覚だった。ただ、「あら先生。結婚はまだなんですね。おモテになるでしょうに」という母の言葉はいつも頭の片隅にあった。  出された薬はチアマゾール1種類だけ。毎日朝、昼、夕の3回服用する。薬を飲む習慣のない夕映にとって忘れずに薬を飲む、たったこれだけのことが苦痛だった。  どうしたって3回の内、1回くらい忘れてしまう。急いで起きて支度をしている時、友達と楽しくお昼ご飯を食べている時。たまに友人が気が付いて「薬飲んだ?」と声をかけてくれなければ、そのまま家に持ち帰るなんてことは日常茶飯事だった。 「ちゃんと薬飲んでる?」 「飲んでます」  受診する度に繰り返されるやり取り。そんな嘘をついたって、血液データは真実を写し出す。 「本当に薬飲んでる? 飲んでてこの数値なら薬を増やさなきゃいけないよ」  そう言われてからようやく喉の奥でぐっと言葉が詰まり、「すみません……何回か飲み忘れました」と謝罪するのだ。
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