先生、お付き合いをしましょう!

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 内服を開始したからといってすぐにコントロールができるわけではない。少しずつ量を調整しながら採血結果と顔を突き合わせていく必要があった。  ホルモンバランス異常により、常に全力で走っているような状態になるバセドウ病は、少しの運動でも息切れをするし、動悸もする。なので、医師からは激しい運動はしないようにと禁止されていた。 「夕映、またマラソン見学なの? この前のドッヂボールはやってたのに」  何気ない友人からの視線が痛く感じる時がある。 「皆で鍋食べに行こうよ! 昆布出汁が絶品なの!」 「ごめん、私昆布はダメなんだよね……。制限されててさ」  ヨウ素は甲状腺ホルモン合成を促進させるため、それを多く含む海藻類も制限されていた。  楽しそうにはしゃぐ友人達の会話を引き裂くようにして断る。最初はそれなら夕映の食べられるものにしようと提案してくれた仲良しグループも、いつの間にか夕映抜きで集まることも多くなっていた。  新陳代謝が活発になるため、常にエネルギーは消費される。だから、甲状腺ホルモンが亢進している内は、どれだけ食べようとも太らない。 「夕映はいいよね。食べても食べても太らないなんて天国じゃん。あーあ、そんな病気なら私もなりたかった」  そんな言葉をぶつけられた時、夕映はこの友人とは付き合い方を考えようと思った。
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