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「そうだね。それなら薬をちゃんと飲みましょうね。最初の頃にも言ったけど、数値が安定したら運動をしてもいいし、多少の海藻類も食べてかまいませんよ」
「先生はそう言ってくれたけど、もう3ヶ月も薬を飲んでるのにその兆しはありません……。だから余計に薬も飲むのを忘れちゃう。モチベーションが上がらないから……」
「うん、わかるよ。すぐに結果が出ないと不安になるし、人間にとって継続ってすごく難しいものだから。でもね、数値が安定するってことは、小柳さんの言う健康に近付くってことね。もう少し頑張って薬続けたら健康な人と同じ生活を送れるようになるよ」
そう言われたことで安堵した。高校生活にはいずれ終わりはくるけれど、社会人になったらそうもいかない。この先進学したってなにがあるかわからない。
都合のいい「いいな」も「夕映はいいよね」も聞き飽きた。それならいっその事、変わってくれたらいいのに。
夕映は、スカートの裾をきゅっと握った。制服の紺色は、握られたことにより影を色濃くさせた。今まで言われたことを思い出すと泣きそうになった。心配してほしいわけじゃない。同情してほしいわけじゃない。だけど、病気だってわかる前と同じように接してほしかった。ただそれだけだ。
病気で痩せるのが羨ましいだとか、授業をサボれてずるいだとか、好き嫌いがあるから食べ物が制限されるだとか。
好きで痩せるわけじゃないし、サボっているわけじゃないし、遅刻してもいいと思っているわけじゃない。
皆と同じように同じ生活を、逸脱しないよう一生懸命生きようと必死なのに、それは誰にも伝わらない。
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