先生、お付き合いをしましょう!

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 理由はわかっている。病気だと言っておきながら見た目は他の子達と変わらず元気だからだ。同じように映画や漫画の話で盛り上がるし、休日は遠出だってしたい。海藻類以外はほとんど制限もないから、好きなものを好きなだけ食べられるし、好きな子の恋愛トークだって弾む。  だから余計にと思われている。  それがわかったのも何気ない一言だった。 「夕映はいいよね。嫌なものがあれば病気だって言って逃げれるし。別に入院しなきゃいけないわけじゃないし、余命宣告されてるわけでもないじゃん? 薬さえ飲んでれば普通に生活できるって言われてるんでしょ? そんなのピルと一緒じゃん」  悪気はなかったのかもしれない。彼女達にとっては面白くなかったのかもしれない。ただ、夕映にとっても重く、辛く、悲しい言葉だった。 「本当はわかってるんです。私は、他の患者さんと比べてまだマシだって。学校にも通えるし、就職だってできるし。制限はあるけど、遊びにも行けて、好きなこともできて……ずっと入院してるような人達に比べたら私は軽い病気だし……少しくらい我慢しなきゃいけないし……」  自分でそう言っていて、目に涙が溜まった。視界が滲んで見にくくなった。隣にいた母も辛そうに顔を歪めた。  旭はまだスカートの裾を握ったままだった夕映の手に自分の手を重ねた。
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