6213人が本棚に入れています
本棚に追加
夕映の手術が決まったのは、看護専門学校へ行き始めて3年目の秋だった。夕映は着々と旭への憧れを募らせ、いつか彼の後ろに立つ看護師のように、あのポジションにいられないだろうかと考えるようになった。
恋人だなんて大それた位置でなくても、せめて一緒に働けないだろうか。そんな不純な動機で看護学校への進学を希望したのだった。
「先生。私、自分が病気になってみて辛いこともたくさんあって。でも、ここに来るのは嫌じゃないから……私も私みたいな患者さんにとってそうなれたらいいなって思って……私も、看護師さん目指そうかなって思って……」
受診の際、意を決してそう言った。もう進路を決めなくてはならない時期で、受験勉強だって始めなくてはならなかった。
「小柳さんが看護師さんにですか。医療に興味を持ってくれて嬉しいです。きっと小柳さんなら患者さんの気持ちを理解できる素敵な看護師さんになるでしょうね」
温かみのある笑顔でそう言ってもらえたから、夕映には悩む必要なんてなかった。翌日にはすぐに担任に進路が決まったと報告をしたし、試験勉強だって俄然やる気に満ち溢れていた。
定員数35名という狭き門だった専門学校だったが、大学よりも1年早く看護師になれる。早く旭と一緒に働ける。そんな一心で受験したものだ。
合格した時も張り切って受診をした。診察をしてもらうという目的を忘れそうなほど夕映は嬉しかった。少しずつ旭との距離が縮まっている気がしたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!