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「うんうん。恵那は美人さんやな。それもわかる、否定はしーひんよ。でもキミが可愛いのも事実やわ」
恵那と涼のやりとりを見て、響がそんなことを言うから。
「僕は可愛く、ない!」
涼が珍しく初対面にも関わらず真正面から見据えて響に言い放った。
「お?」
それには恵那も驚く。
いつだって恵那の陰で小さくなって、目尻が垂れさがってる男からは逃げている涼なのに。
「僕だって、男子高校生だし! もう小学生じゃ、ない!」
ぷく、とふくれっ面で言う内容に、
「え? 何、涼。ひょっとして小学生に間違われたこと、あんの?」
恵那が目を丸くする。
「……うん……昨日、バス停でバス待ってたら地元の見守り隊っぽいおじーちゃんに、お嬢ちゃん小学生なのにバス一人で乗れるの、えらいねってゆわれた」
紺色のブレザーこそ、着てはいなかったけれど。ちゃんと男子用のネクタイ締めたカッターシャツに校章入りのニットを着て、しかもズボン姿である。
どこをどう見ても“男子高校生”、というカッコでいただけに、涼にはかなりショックで。
「お……お嬢ちゃん……」響が込み上げる笑いを抑える。
「あー……ね」恵那は苦笑しながら納得していた。
わかる気は、する。
身長だけそこそこある女子小学生なんてザラにいるだろうし、胸のない――筋肉もないが――涼がそう見えるだろうことは、致し方無いのではないか、と恵那も響も思ってしまい。
「僕は、可愛くなんかないし。近いうちに絶対えなのことなんて追い越してやるんだから」
まあ、恵那も大して身長がある方ではないので。
さすがに百七十は超えているけれど、涼が成長期を迎えたら追い越すこともあり得ないわけではないから。
鼻息も荒く拳を握りしめている涼に。
「じゃ、明日も牛乳飲もうな?」
恵那は優しく笑いかけて言った。
そんな二人のやり取りを微笑ましく見守っていた響が、隣で無表情で固まっている男に、ふと気付いて
「てか土岐、おまえも人見知り発動しとらんと、なんか喋れや」ツッコミを入れる。
「…………」
「あー、もう。ジャマくせーな。涼、コイツは土岐。俺の弟な」
黙ったまま涼を見つめて固まっている弟に、しびれを切らして恵那が紹介してやる。
「おんなじ、かお、してる」
涼がほわん、とそんなこと言うから。
「ま、双子だからね。でもこいつ、バスケやってるからゴツいんだよ」
ちょっとだけ悔しさを滲ませる。
自分と同じ顔、でもスポーツマンらしい筋肉質な体つきをして寡黙な“ザ・漢”的な雰囲気の弟に、恵那はちょっとだけコンプレックスがある。
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