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高校の部活は割と中学での経験者が集まるようで。
恵那と涼は、中学時代から吹奏楽部だった。
そして当然のように吹奏楽部に入部届を出したのは、部活紹介のオリエンテーション直後。
吹部が活動している第一音楽室の扉は重く、いつだって恵那が先に開けて涼をエスコートしてやる。が、そのことに当人は気付いていない。気付けばきっとまた拗ねるだろうから。
――気付かないトコがまた可愛いんだけど。
既にアップしている音に溢れかえっていた音楽室の奥へと進むと、
「恵那、やっぱバリトン頼むわ」
中学時代の一個上の先輩である、立山徹に言われた。
恵那は木管セクションであるグランドピアノ周辺へ、涼は金管セクションがたむろっている音楽準備室前の辺りへと別れる。
四月中は初心者もいるので新入部員の楽器は定まっていなかったが、ゴールデンウイーク前にとりあえず全員の希望楽器を集計して顧問と幹部で話し合い、開けて今日、担当楽器が決まった。
中学時代はサックス全般をフリーで持ち替えるということをやっていた恵那である。
少人数な部活だったし、元々楽器はいろいろ楽しみたいという恵那だからこそできたとも言えるが。
「俺、希望はアルトだったハズっすけどー」
中学の吹奏楽部は少人数文科系クラブだったのもあり、先輩とはほぼほぼタメ口OKなゆるゆる部活。
そんなところで可愛がられていた徹とのやりとりなので反論してみた。
「アルトは山中、テナーは芝崎。バリトン経験者はおまえしかいねーんだもん」
「経験者、つったって俺数えるくらいの曲しかバリサク吹いてねーし」
一応の所属はアルトサックスだったから。
それに、アルトのが目立つし。
「おまえなー。先輩の言う事に逆らうなよなー」
「逆らってませんー、意見述べてるだけですー」
「でもそれは聞けませんー。各学年楽器一本ずつが基本なんだよ、ウチは。一年にアルト二本はいらねーの」
「徹先輩がバリサクやればいいじゃん」
「バリトンは二学年で一本。俺は二年のアルト担当」
「ずりーな」
「ずるくねえ。てか、まじおまえ先輩に対する態度じゃねーし。なんでそんなナマイキかな」
「やだなー、徹先輩と俺の仲じゃん」
恵那がくふっと笑って軽くウインクすると、徹は項垂れた。
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