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決して反論できないキラーワードを僕が告げると、ムネオは少し口ごもる。
しかし、その隙を突いて、ナスダがまた口を挟む。
「僕はルーの中に散らすけどね、福神漬け」
ナスダが言い終わった数瞬、僕は彼に細い視線を送る。
「そういう無作法は家だけでやれ。店ではやるな。絶対に」
僕の注意が一瞬だけナスダに向いた隙に、ムネオは体勢を整えてきた。
「確かに福神漬けはご飯側に置く。でもな、別に手前に引っ掻けるようにすくうから、何の問題も無いんだ。むしろ福神漬けが右側にあると、スプーンを右から左へスライドさせねばならないから、やり辛い。手首のスナップを効かせて左奥から手前にすくい上げた方が取りやすいに決まってる。囲うようにすくうんだ」
「ラッキョウは?」
「同じに決まってんだろが」
ナスダが議論のリズムを崩すが、一蹴された。
「いやわかんないかな、左奥に福神漬けがあると、福神漬けの汁でご飯がビショビショになってても気が付かないだろ? その点、右側にあればビショビショ具合が良く見える。即座に対処が可能なんだよ」
「いや俺は左奥の方が良く見えるし!」
どうにもこいつは物の道理をわかっていない。
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