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さっぱり理解できない。
絶対に左だと思う。
僕はそう主張した。
「いや、右だ。左とか、物の道理を理解していない輩の戯れ言だ。美しくない」
しかしムネオは納得しない。
「いや頭おかしいな。理屈で言ったら間違いなく左だろ。右とか、直感と合理性が結実しない可哀想な人間の所業としか思えない」
僕は食い下がる。
別にムネオを納得させねばならない事ではないのだが、彼があまりにも物事を正しく理解しないものだから、僕も意地を出さねばならない気がした。そうしなければ、彼は生涯を通して誤った認識を抱き続けてしまう。
それは彼のためにもならなければ、下手をすれば人類規模の損失にも繋がる気がしないでもない。
「いや理屈で言っても右だろ。どうして感覚と思考が一致しないんだ、お前は」
しかし彼は何一つとして理解していないようだ。
僕は彼の残念な頭を少し哀れんでしまう。
「僕は真ん中だと思う」
ムネオをどう是正してやるか少し考えていると、ナスダが横から口を挟んできたが、僕もムネオも即座に否定する。
「真ん中は一番無い」
「何もわかっていない奴は即座に黙れ」
ムネオと僕でナスダを黙らせる。
真ん中なんて、どう考えても一番頭がおかしい。
僕はムネオの主張も理解できないが、ナスダのことはもっと理解できなかった。ユニークかつクレイジーな意見を寛大な心で尊重するほど、今の僕はおおらかではいられないのだ。
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