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「さすが、ベストセラー絵本作家だね」
「まあな」
朔ちゃんは自慢げにフンと鼻を鳴らして見せた。
朔ちゃんは昔からおだてに弱いところがあるのだ。
そこをついて攻略するしかない。
「実家の〇△町でも朔ちゃんは
大スターだって清子おばちゃん言ってたよ」
そう言ってもう一度よいしょすると
朔ちゃんは
「そんなおだてたところで
住まわせないからな」
とぴしゃりと言ってのけた。
「そんなあ。朔ちゃん、お願いします!」
「断る」
「このままでは私、家賃払えなくなって路頭に迷います。」
背に腹は代えられない。
私はフローリングに正座すると
朔ちゃんに向かって深々と頭を下げた。
「今ならネットカフェとか
なんでもあるんだから、
仕事見つけて溜まるまでそこで凌げばいいだろ?」
朔ちゃんは私を横目に対面キッチンで
来客用のお皿やカップを用意し始めた。
「ひどいよ、朔ちゃん!
それに知らないの?
女の子がネットカフェで寝泊まりしてて
男の人に痴漢にあうとかよくあるんだよ?」
私の言葉にほんの僅かだけど
朔ちゃんの眉がピクリと動いた。
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