第2話

9/14
前へ
/40ページ
次へ
しかし、やんちゃな夢生子が唯一、静かな時があった。 それが俺が絵本を読み聞かせている時だった。俺が絵本を読んでる時は嬉しそうにまるで物語の世界へと入っているようだった。 俺は元々、本が好きだったこともあって読み聞かせは苦ではなかったし、夢生子もその時だけは大人しくしていてくれる。 その時から、二人の図書館通いが始まったのだ。 図書館の絵本はすべて読み尽くしたと思う。 しかし、それで夢生子が完全に大人しくなってくれたかというとそうではない。 小学生なった夢生子はさらに逞しくなった。 当時、近所で夢生子の同級生で和智雁之助(わちがんのすけ)という、名前こそ強そうだが、太っちょで弱虫の男の子がいた。 夢生子は雁之助のことをがんちゃんと呼んでいたが、雁之助はその性格と容姿から同じクラスのガキ大将からイジメられていたみたいなのだ。 ある日、小学校から帰宅した俺は夢生子に捕まって図書館に行くことになった。 その道中、雁之助がガキ大将とその仲間達に、よって集ってイジメられているところを目撃したのだ。ガキ大将は雁之助を仲間たちをつかって羽交い締めにし、クワガタの角で雁之助の鼻を挟もうとしていたのだ。 その頃はすでにスーパーマン熱の冷めていた俺は“面倒くさいな...後で、先生に報告してちゃんとあいつらに捌きをくだしてやるから”そう思いながらその横を通り過ぎようとした。 しかし、俺の影響でスーパーマンに憧れていた夢生子はそいつらを見逃すことはなかった。 “あんた達っ、私の友達に何してくれとんじゃあっーー!!” そう言って夢生子は一目散にガキ大将に向かって駆け出すと、そのままガキ大将に飛び蹴りをくらわしたのだ。 “いってえなっ。男女の夢生子っ” 怒ったガキ大将は夢生子に掴みかかった。 “誰が男女よっ(怒) よって集って一人をいじめるなんて 恥ずかしいことしてんじゃないわよっ” と、夢生子も負けじとガキ大将に掴みかかった。 それから二人の取っ組み合いの喧嘩が始まったのだ。 本来ならここで止めに入らないといけないのだが、人間というものはあまりに凄まじい取っ組み合いの喧嘩を目の前にした時は ただただ、傍観者として呆然としてしまうのである。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加