第2話

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しかし、夢生子がガキ大将のTシャツから覗く腕にガブリと思い切り噛み付いたときにハッと我に返った。 “ぎゃーーっ、イッテぇ、離せっ夢生子っ” 半泣きでもがくガキ大将に夢生子はスッポンのように噛み付いて離れない。 さすがに絶対あれは痛そうだ... ガキ大将と言えど可哀想になってきた 俺は夢生子に向かって “夢生子っ、道草くってたら図書館しまるぞっ”と叫んだ。 俺の言葉に夢生子はピタっと噛みつくのをやめると“あっ、そうだ。こいつらと遊んでる場合じゃなかった”とパタパタとズボンに着いた埃をはらう。 “がんちゃんも暇なら一緒に図書館行こう♪” 夢生子は雁之助に一言告げると何事もなかったように図書館に向かって歩き出した。 雁之助と俺はシクシクと泣きながら、噛まれた腕を痛そうに押さえているガキ大将を気の毒に思いながらも夢生子の後を追った。 それからというもの俺の読み聞かせメンバーに雁之助が加わったのだ。 その後、噛み付かれたガキ大将はどうなったかというと、女に負けたなんて親や先生に言うのはプライドが許さなかったのか告げ口されることはなかった。  それどころか、ガキ大将に勝った夢生子は 皆から崇め慕われ、新たなガキ大将として王座に君臨したのだ。 それからというもの、雁之助がイジメられることはなくなったのだ。 夢生子はいつも猪突猛進だ。 後ろを振り返ることはない。 ただ真っ直ぐ自分に思うままに自由に生きている。 それは俺が唯一、夢生子の尊敬しているところなのだ。 そして、上司に蹴りを入れたと聞いて、変わらない夢生子のことを少し嬉しく思った。
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