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「いいや何でも。さくらちゃん…だっけ。君がこの地獄で目立つ原因は、ただ若くて可愛らしい女だから…というだけではないようだね。そんな眼は、ここ数百年見たことがない。」
「かわっ…!?って、…眼、?」
「ま、百鬼はこの地獄で鬼畜外道と有名な番人だから、とりあえず頑張ってね。辛くなったら僕のところにおいで。その光を簡単に消してしまうのは惜しいから」
そう言うと黄緑はこの場を後にした。基本的には、意味のわからないことを言われた気がする。自分の担当ではないというだけで、百鬼と同じ番人なのに味方だというような態度を取るものなのだろうか。信用をしてもいいのか?いやいやここは地獄、そうでなくても私はついこの間あの男に裏切られ、騙されてこの地獄にいるんじゃないか。私の悪い所はこうやってすぐに人を信用しようとしてしまう所だ。私は自分の目を覚ますように顔を左右に振って、両頬をビンタした。
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地獄でもパンが食べられると思わなかった。味気のないただの食パンだったが、地獄での朝食にしたら高級ホテルのビュッフェ以上の贅沢品だろう。口の中でパサつく食パンを2枚頬張ると、突然館内放送がかかる。その音に、囚人たちがビクッと肩を振動させた。
≪番人百鬼様の囚人グループは8時に百鬼様の島の地獄門前に集合するように。繰り返す__…。≫
「あ…これって、私?」
そう呟いたのは私だけだった。この放送がかかるや否や、周りの囚人たちは言葉を発する暇もないほど勢いよく朝食を無理矢理口に放り込み出し、慌てて出口へと駆け出して行ったのだ。そんな様子に呆気にとられていると、私の左肩に誰かの手が力強く乗った。
「お前昨日百鬼様に盾突いてた末恐ろしい女じゃろ…!?何してる、お前も早く行かんと惨いことになるぞ…!」
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