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看守の腕にしがみつくと、私の後ろにいつのまにか百鬼が現れる。
「お前が先導して、目的地に着いたのはお前の方が速かった。よって2975番が最後尾だ。お前が一歩でも先に進まなければ、自分を助けてくれた2975番を見殺しにすることはなかったのに、残念だな」
「っ…百鬼っ…!」
この状況を楽しんでいるのか。百鬼は私を敢えて煽るような言葉を吐いて看守の腕にしがみついている私の腕を掴み、看守に行けと合図した。
「っ待て!」
「自分のせいで地獄を見せられる人間の姿を見て…お前は正気を保っていられるのか…見物だな」
____そうか、こいつ、私を試しているんだ。
“賭けだ。あと1ヶ月、俺がお前のその眼を殺すのが先か、お前がその生きた眼のまま俺の試練に打ち勝つか…”
昨日交わした賭けの一環で、私を屈服させるためにあのおじいちゃんを使っているんだ。それに気が付いた途端、自分のせいであのおじいちゃんを巻き込んでしまったこと、良かれと思っておじいちゃんを先導したこと…悔しくて申し訳なくて、唇を噛みしめた。口の中には昨日と同じ、鉄の味がした。
「……いいんじゃ」
刹那、百鬼でもなく、看守でもない掠れた声が耳に届いた。
「…長らく居続けたこの太陽の出ない地獄で…昨日久しぶりに光を見た。生きるという感覚を思い出させてくれたお前を放っておけなかったわしだけの責任じゃ…」
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