15人が本棚に入れています
本棚に追加
おじいちゃんだ。看守2人に腕を捕えられ、私に背中を向けながらそう言った。
「わしは人間界にいる時…自分の妻を殺した。一生かけても償えない業…罰を受けるのは当然なんじゃ。罪のないお前が百鬼様に抗って刑期を延ばす必要はない」
いつの間にか、目の前には鬼の顔の形をした大きな壺が現れる。そこからは見る見るうちに龍のように燃え上がる炎が立ち上り、周りにいる私達ですら皮膚を焼かれるような熱さを感じさせられた。
「マグマ地獄は…今から丸3日焼かれ続ける無限灼熱。この中で叫んでももがいても炎から逃れることはできない」
百鬼は瞳に赤い炎を写しながら言う。この男は、今まで何人の人間をこうして殺してきたのだろう。たった一人の老人がこのマグマの中に放り込まれることなんて数秒後には忘れてしまうほどの小さなことなのだろうか。だから、何の躊躇いもなくマグマに入れろ、と合図ができるのだろうか。
__おじいちゃんは、私のせいではないと言った。刑期を延ばすなとも言った。即ちそれは、自分を見捨てろ、ということだ。そして気負うなと。そういうことだ。
でも。…私は…。
「できない…!!」
私は百鬼の手の平で転がされていようと、刑期が延びようとも、目の前で苦しみに飲み込まれていく人を見捨てるなんてできない…。
「離せって、言ってんだよ!」
「ぐぁあ!?」
「しゅ、囚人貴様ぁあ!」
最初のコメントを投稿しよう!