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おじいちゃんがマグマに飲み込まれるあと一歩のところで、両側の囚人二人を飛び蹴りで薙ぎ倒し、おじいちゃんを炎の届かない場所へ引っ張った。
「……ムエタイ。昨日から並外れた打撃技に度量は何かと思っていたが…人間界での格闘技、ムエタイの技だな」
「!」
言い当てられた通り、私は幼いころからムエタイを修練させられ、日本においたムエタイの女子大会で優勝した経験をもつ。この地獄に来てムエタイのおかげで血の池から這い上がったり、おじいちゃんを助けられたりした。心の底から習っていてよかったと思ったよ。百鬼がムエタイを知っていたのは意外だ。
「百鬼…私を殺すために他の人を巻き込むなんて…あんたのやり方は許せない」
「…ほう。重罪人の分際で俺のやり方に口出しか、4771番。ならば、どうする?」
「私とタイマン勝負しな…!」
数秒の沈黙が訪れる。初めに驚きの声を上げたのは、おじいちゃんだった。
「な、何を考えてるんじゃ…!お前がいくら強かったとして、番人最強の百鬼様には…!」
「…はっ。俺とタイマン勝負だと?馬鹿だとは思っていたが…これほどまでとは」
一切表情を変えない百鬼が、刺々しい笑顔で笑った。灼熱の炎が上がっているはずのこの空間が一瞬で凍るような冷えを感じる。
「…やってみないと、わからない。これで私が勝ったら最後に集合した者へ罰を与えるこの制度を廃止して」
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