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「ひゃ、百鬼様…この囚人我々が追放しましょうか…!?」
「いい」
看守の言葉に耳を貸さず、百鬼は口元を釣り上げた。
「面白い、いいだろう。立ち上がることもできないほど切り刻んでやる。身も、心も」
百鬼は背中にバツ印で背負っていた二刀を抜き、私に刃先を向けた。やはり百鬼はあの刀を使うようだ。ただならぬオーラに私も冷や汗を手にも握りながら拳を構える。百鬼は音もなくいつの間にか近くまで来ていることが多かった。一瞬でも眼を離したら、きっとその瞬間に斬られる。眼を凝らして百鬼を見つめるも、気がついたら視界から姿が消える。
________後ろ!
シュバッ!
「…ほう」
百鬼が私の後方に回り、首を斬るように動かした刀をギリギリのところでしゃがんで躱す。息を吸う暇もない間にもう一方の刀が上から突き刺さすように振り降りてくるのを見極め、隙をついて渾身の拳を百鬼の腹部に振り放った。
ドォンッ…
岩も壊れるような衝撃が、地獄に響き渡った。
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