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「__…貴様ら、覚えておるな?」
閻魔は四人に向けて、言葉を発した。その瞬間、四人は地面に立膝をつく。
「あと1ヶ月…。番人として一番成果を上げたものが、次期閻魔の座をくれてやろう。」
地獄の空に浮かぶのは、太陽ではない。血の塊が浮かび上がったものが空に浮かんでいる。赤い光を放つそれが、赤い雲から顔を出して、閻魔の姿がやっと四人の目に映る。その姿は、閻魔というよりも悪魔を思わせる。赤色から黒色に変わっていくグラデーションの髪の毛、三白眼、頭の左右から突き出している大きな角、鋭利な牙。頬についている無数の赤い傷。久須郎と同じくらいの年齢に見える閻魔は、真っ黒なマントに身を包んでいる。
「あと一ヶ月…」
与太造がそう呟いた。この地獄は、転換期に向けて動き出していた。現閻魔であるこの男は、現閻魔大王が引退することから閻魔大王になることが決まっており、実質の政権を次期閻魔へと譲渡するのが一か月後に迫っている。ちょうど11ヶ月前、地獄の番人たちがこのように召集を掛けられ、閻魔よりこの旨を聞かされた。閻魔になれば、地獄の政権を一挙に握れる。番人にとって、これほどの昇格はない。彼らはこぞって闘争心を滾らせたのである。
「承知しております」
黄緑は自信に満ちた顔でそう言った。番人の成果、即ち囚人たちにいかに罪人の責を感じさせ、懲らしめてきたかである。
「…それから、先程の新しい女の囚人の事であるが」
手負いの囚人が多ければ多いほど、又は重罪人の囚人を裁けば裁くほど、言わずもがな自分の実績となる。既に多量の囚人を各々抱えてはいるが、残り1ヶ月、走りきらねばならない。
「この重罪人の女は、あやつに受け持ってもらうことにした」
「「「「!」」」」
4人の脳裏に、一人の男が浮かんだ。地獄の番人きっての実力者で、冷酷、無慈悲…感情を殺した男、百鬼(ひゃっき)の姿が____…。
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