15人が本棚に入れています
本棚に追加
「重罪人の囚人とはいえ、女の子が虐げられている姿は見ていて心地よくないからね」
黄緑さんはそう言うと私をお姫様抱っこしたまま険しい表情をしている百鬼に向き直った。
「…いくらあと1ヶ月だからといって、横暴すぎるな百鬼。血の池地獄にマグマ地獄…閻魔様はこんなやり方は好まない」
「…お前こそどういうつもりだ黄緑。他所の島の獲物に手を出さなければ俺に勝てないと自負しているのか」
「僕たちの目的は囚人たちを痛めつけることじゃない。あくまで人間界の罪を罰し、清らかな魂として再び輪廻転生させることだ。君のやり方じゃ目先の罰に目が眩んで本来の目的を果たせない」
「他所島の囚人に手は出せない掟のはずだが」
「手出しは出来ないが、助けてはいけないとは閻魔様の口から聞いたことはないね」
一体何の話をしているか分からないが、この二人があまり仲良くないことはわかった。そして何かのタイムリミットがあと1ヶ月なことや、番人の本当の役目とか。朦朧としている意識の中だけれど、二人の圧がすごすぎて意識を失うことなんて全くできやしない。
「とにかく、ここ二日の君の暴挙を上に上げられたくなかったら今回はさくらちゃんの意志を汲むことだね。今後一切、最終到着者にペナルティを課すことはしない。それが君のただの遊びなら尚更」
ドクン、
黄緑さんの強い圧に、心臓が高鳴った。凍ってしまうような百鬼の圧とはまた違う、押し潰されてしまいそうな重厚な圧。すぐに分かった。やっぱりこの人もこの地獄の番人なんだと。百鬼に並ぶ力の持ち主なんだと。私が苦しそうにしているのを感じ取ったのか、黄緑さんは圧を放ちながらも私を抱く力を強くした。大丈夫だよ、とあの穏やかな声で言うように。
最初のコメントを投稿しよう!