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どろどろとした血の池から何度も顔を出しても、囚人たちによって沈められる。続く酸欠に体が疲弊していく様子が見える。しかし、この地獄では死ぬことができないからこれの繰り返し…というわけだ。死ぬよりも辛い生き地獄、見せしめだ。見るに堪えないそれを目撃してしまった囚人たちの顔からは、精気が抜けていく。百鬼は表情一つ変えずにそれを見つめていた。
駄目だ、こいつ、狂っている。地獄の番人が何者かなんて私は知りはしないけれど、こんなことが平然とできるなんて腐っている。
「……ろ、」
「…何だ、怖気づいたか。先程の威勢が聞いて呆れるな」
「…しろ」
「…は?」
「その人を解放しろ!」
「!?」
私の頬を掴んでいた百鬼の手首を掴んで、言い放つ。一切表情を変えなかった百鬼が目を見開いているところを見ると、予想外の反応だったようだ。しかし次第にその眼は元の暗さを取り戻していく。
「……いいだろう。おい、そいつを解放しろ。その代わりにこの女を放り込め」
「!」
「…どうした。まさか自分が身代わりになるなんて、とでも言い出すのか?そんな覚悟でよくあんな物言いができたものだ」
百鬼はどこか勝ち誇ったように言った。ぐぐぐ、と頬を掴んだまま私を持ち上げて、血の池の上に晒す。まるで私の明暗は自分次第だからさっさと屈服しろというように少し声を跳ね上げて。
「……っそれで……その人を助けてもらえるのね……」
「……」
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