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やればいい。私は百鬼の手首を離さずに、力いっぱい握った。屈服なんてするもんか、そんな異常な意地と、心底湧いて出ている恐怖を込めて。百鬼は私の目を数秒見つめた後、目を伏せ、私の手を叩き落として手を離した。
興冷めだ。
そう言って。
バチャン!
血しぶきが舞い上がる。どのくらい沈んだのだろうか、一気に苦しくなる呼吸と、浮き上がれない恐怖。酸素を求めて必死に重々しい体を上に上げようとしても、どろどろとした液体がそれを容易にさせてくれない。それに付け加え、目を開けられないのだ。
「ぶはっ!」
何とか水面まで来られて、一気に酸素を取り込む。薄らと歪む視界を開けていくと、部下たちの手が私を再び沈めようと迫ってきているのが見えた。ここで沈められては、エンドレスで苦しむことになる。それに抗える体力ももう少ししか残っていない…今しかない。一か八かに賭けるのだ。
「沈め囚人!」
「っ、あんたも、ね!」
「な!?」
頭上に迫ってきた手を手錠のはまった両手で掴んで、池に引きずり込むと、男の身体が私の横に勢いよく落ちる。何ぃいい!?と、他の軍服の部下たちが驚いている声が聞こえてきた。そして沈んだその男を水の中で両足で踏む。その動作によって足を拘束されていた縄が解けた。反動で何とか地上へと這い上がる。顔を拭って、大きく酸素を取り込むと部下たちが何だこの女はぁああと騒いでいるのが見えた。何とかなったことにホッとしたのも束の間、軍服の一人が私の方に走ってきた。再び池に落とそうと、拳を掲げて。
「……もういい」
ピタリ。
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