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沢田くんとお父さん
「す、す、す、すみません。あ、あ、あ、あの、驚かせて本当にすみません!【警察は呼ばないでください、佐藤さん!。゚(゚´Д`゚)゚。】」
名前を呼ばれてハッとする。
今の、【 】で聞こえた言葉は私だけが聞こえるその人の内なる声で、その人の本心とも言えるものだ。
顔文字が付いているのはあくまで私のイメージで、こんな感情っぽいというのを表している。
「沢田くんのお父さん……?」
よくよく観察してそう呟けば、変質者まがいの格好をしたその人が必死でうなずく。
間違いない。沢田くんのお父さんだ。
一年中こんな服装をしているうえ、職業は吟遊詩人だというのだからかなりレアな人だと思う。
「こんな街の中で会うなんて、びっくりしました。いつも砂漠とか永久凍土とかをさまよっていらっしゃるものだとばかり思ってたので」
「い、い、いや……そ、そんなことないです……【たまにジャングルも歩きますよ(・∀・)】」
いや、そこは普通に街を歩きましょうよ。
「どうかしたんですか?」
「あ、あ、あの、実は、空のことでちょっとご相談が……」
沢田くんのお父さんはサングラスの奥の目を伏せた。かどうかは分からない。だって何にも見えないんだもん。
でもなんとなく懊悩をにじませたような雰囲気で沢田くんのお父さんが言う。
「空と、クリスマスを一緒に過ごしてあげてくれませんか?」
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