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沢田くんと陸くん
「ちょっと待て、そこの金髪クソゴリラ! お前なんかに空を任せてられるかよ! 空のクリスマスにハッピーなサプライズを仕掛けてやれるのは俺しかいねえだろ!」
と、その時、別方向からまた誰かの声がした。
え、どうなってるの? この商店街。ディズニーのミュージカル映画並みにどんどん誰かが割り込んでくるんだけど。
慌てて声のした方向を見てみると、そこには沢田くんのいとこの陸くんが俺様風を吹かせて立っていた。
夏休みに沢田くんの別荘で会って以来だけど、こんなところで再会するなんて?
「話は聞かせてもらったぜ。空が困ってるんだって? だったら俺に任せろよ。すぐにデンジャラスでスリリングなサプライズの計画を練ってやる」
「陸くん⁉︎ やめてやめて! クリスマスにデンジャラスもスリリングも必要ないよ!」
私は必死で陸くんを止めた。
沢田くんを驚かせるのが大好きないとこの陸くんのサプライズな罠によって、楽しいバカンスを過ごすはずだった夏休みが地獄と化したことは記憶に新しい。
おかげで『沢田くんはおしゃべり2』はたかがひと夏の思い出話にする予定が10万字を越える長編に化けたし、この話だってめちゃくちゃ短い話にする予定だったのに既に3000字を越えている事実を私は見過ごすことができなかった。
このままじゃ、クリスマスまでに完結が間に合わないよ!
「沢田くんと美味しいケーキを一緒に食べられれば、それでいいから! みんなで穏やかに楽しく過ごそうよ!」
もはや2人っきりのクリスマスは絶望的だ。
だったらせめて、沢田くんが楽しく過ごせるクリスマスにしたい。
涙目の私に、陸くんは言った。
「美味いケーキ? それなら矢野に作らせよう。あいつフランスにいた頃、五つ星レストランのパティシエから本格的にスイーツ作りを伝授されているからな」
矢野さんってたしか、沢田くんの別荘で支配人をしてくれていた人だよね。なんでもこなすスーパー執事っていうイメージがある人だけど、なんでフランスでパティシエ修行まで経験してるの⁉︎ これも別荘のあるあの島を手に入れるための布石……なのかなあ?
彼の謎は深まるばかりだ。
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