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マーガレット王女の誕生は翌日には国中で報じられ、生誕祭、新年と共に国中がお祭り騒ぎとなった。
年が明けて数日が経ち、マギーとユーリ様の体調が落ち着いたところで、マギーを抱いた私と、杖をついたユーリ様は、慣例通り王宮のバルコニーから、王女誕生のお披露目を行った。
2人並んで集まった人々に手を振れば、冬の寒空の中に歓声が上がって、口々と祝いの言葉が聞こえた。
建前上、杖をついているユーリ様と、産後の私の身体を気遣って、慣例よりも短時間での行事ではあったけれど、こうして人々に喜ばれる事はありがたい事だと実感した。
マギーはとてもお利口さんで、歓声に泣くこともなく終始ぽやんと宙を見つめたり、私やユーリ様の顔を見つめてモゾモゾと手を動かしている大物ぶりだった。
行事を終えて温かい部屋に戻れば、先王ご夫妻とジフロードとジェイドが出迎えていて、すぐにマギーはジフロードの手に渡り眠り始めた。
「とりあえずはお疲れ様ね。マギーは泣きもしないし、将来は随分と大物になるかもしれないわ」
お茶を出してくれた王太后陛下が眠っていくマギーの顔を眺めながら言えば
「ユーリもジェイドも、歓声に驚いてギャーギャー泣いていたからなぁ」と先王陛下も懐かしそうに眼を細めた。
国王と、宰相という職はこの国で一番図太くないとやっていられない仕事だと常々ユーリ様とジフロードが戯れに言い合っていることがあるくらいだ。そんな両親の子どもなんだから、マギーは本当に大物になるかもしれない。
ユーリ様とジフロードの間に産まれた命だけれど、私はこの子の母として精一杯この子を愛して慈しみ導ける存在であろう。そしていつの日にか、この子が本当の母を知った時、彼女がそれでも背中を追いかけたいと思えるような女性であろうと思ったのだ。
みんなで無事にマギーのお披露目を終えた事を祝ったその夜、私はジェイドの腕の中に閉じ込められて、甘やかされるように与えられる愛撫に身体も心も支配されていた。
もう何度も何度も時間をかけて、ジェイドによって慣らされた私の身体は、彼が与えてくれる刺激の一つ一つに的確に反応するようになっていて。
なんならもっと欲しいと懇願してしまいそうになるくらい、その快感を欲する女の自分を強く感じるようにすらなってしまっているのだ。
だからこそこの晩、明らかに私達2人の関係がパートナーとして大きく前進する事になるその予感に、私は怯えることも、緊張する事も無かった。
ジェイドとなら怖くない。彼と2人ならどこまででもいける。
そんな安心感中で、私はその時を迎えて…そして初めて彼と一つになった。
ジェイドは終始、痛みを耐える私を気遣うようにしてくれて、強ばる身体をゆるゆると優しく撫でて、抱きしめてくれた。
「っぁ!んっ!んっ…んっ、ぁん」
「気持ちよくなってきた?」
痛みに慣れてきて、少しずつ快感を感じてきた頃、窺うように見下ろされて小さくコクリと頷く。
まだ少し苦しいけれど、私の中にジェイドがいて、ようやく一つになれたのが嬉しくて、私は手を伸ばして、彼にハグを求める。
ゆっくりと、身体を近づけてきた彼が額に口付けて、背中に手を回すと、力強く抱きしめられる。
「っぁあっ!!」
身体がしっかりと密着すると今までとは違う、更に奥をぐんと刺激されて。私はいっそう大きな声をあげて、彼の首に捕まる。
「っ…」
苦しげに彼が息を飲む気配がして。
「アルマっ…アルマっ」
彼がうわ言のように甘く熱い息を吐く。
首筋にかかるその刺激に、私が更に身を縮めると、ジェイドはたまらないと言うように顔を上げた。
私を見下ろす彼のグリーンの瞳は熱を含んで、じっと私を見下ろして、そして愛おしげに細めると。
「やっと、手に入れた。ずっとずっと、欲しくてどんな形でも手に入れたかった、俺だけの宝物」
昔から、ずっと、これからも
そう低く甘く囁いた彼が、耳元に唇を寄せると
「愛している」
いうや否や、今までゆったり動いていた抽送が、早く深くなっていく。
すぐに身体が反応を示してビクビクと身体が震えて、視界が白む。
急激にやってきた、大きな刺激の波に、私は身体を退けぞらせながら、小さく悲鳴をあげて、彼にしがみつく。
振り落とされないように、彼と離れてしまわないように。
私もあなたを愛していると、伝わるように。
この先どんな困難があっても、たとえ堂々とパートナーとして振る舞う事ができなくても。
心から愛して、欲してくれる人と、手を取りあってお互いを思い合って、生きていく。
「っアルマっ!」
最後に彼が強く私の最奥に打ち付けて、一層切ない声を上げる。
汗ばんだ彼の背中を強く抱きしめて、彼の耳もとに唇を寄せる。
「私を、選んでくれて…ずっと想ってくれていてありがとう」
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