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トゥルルルル…
電話の呼び出し音が緊張を高める。
『はい。嘘つき屋です。』
低めの男性の声がした。
「あ、あの、広告を見て電話しました。」
『ありがとうございます。何かお困りですか?』
「あの、妻に離婚届を渡されまして…」
『それはそれは、大変でしたね。』
男性は余計な事は言わず、かと言ってぶっきらぼうでもない。その落ち着いた声は、嫌味を感じさせず、こちらをも落ち着かせてくれた。
『離婚の原因は?』
「…浮気…です。」
『そうですか…。
で、その離婚を食い止めたい、という事ですね。』
「そうです。」
『浮気相手の方とは今は…?』
「それが…相手が誰かも分からないんです。」
『…ワンナイトラブ?』
「いや、そんなんじゃ!
あ、いや、そうなるのか…?」
『詳しくお聞きしても?』
「実は、記憶がないんです。
朝目覚めたらホテルで寝ていて…」
電話越しの男性に、一昨日の記憶と昨日の出来事、そして今日の出来事を全て話した。
『なるほど。』
『分かりました、あなたが正式にご依頼されるなら承ります。どうされますか?』
話を聞いて一呼吸置いた後に男性はそう言った。
「何とかなるんですか!?
可能性があるなら、お願いします!」
『分かりました。
私は切原と申します。これから宜しくお願い致します。』
「あ、中村です。宜しくお願いします。」
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