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待ち合わせ場所のファーストフード店へと入り、辺りを見渡す。
切原の顔を知らないので探したって分からないのだが。
腕時計を見ると、約束の時間迄まだ10分程あった。
とりあえずコーヒーを買って壁際の席に腰を掛けた。何度も何度も、時計と入口を確認し切原がやって来るのを待った。
5分程経った時、1人の男性が店内へと入って来た。その男はさっと店内を見渡し、真っ直ぐに俺の方へと歩いて来る。
『こんばんは。中村さんですね?』
「切原さん…ですか?」
『はい、切原です。
前、失礼しますね。』
そう言って切原は目の前の席に腰を掛けた。
切原はスラッと長身で、黒のジャケットがよく似合う。少し天然パーマのような黒髪が、雰囲気を和らげていた。
「あの、どうして俺だとわかったんですか?」
『それは、こちらを見ていたからです。』
「それだけで…?」
『他の客は、2人以上か、勉強や仕事をしていました。私のことを気にしていたのはあなただけだったんですよ。』
なるほど、と感心してしまった。
“嘘つき屋”が何なのかは分からないが、まるで探偵のようだと思った。
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