嘘つき屋

『今回の状況からいくと、“浮気ではなかった”と奥様に証明すれば離婚する理由は無くなりますよね。』

｢それはそうですけど…でも、どうやって？
証拠の写真もあるし、“浮気じゃないんだ”って言っても信じてなんてもらえないですよ！｣

『そうですね、中村さんが言っても信じてはもらえないでしょう。言い訳にしか聞こえませんからね。』

分かってるなら適当なこと言うなよ、と思いながら少しムッとした表情をする。

切原は微笑んで話を続ける。

『だから、相手側に証言してもらうんです。浮気相手の女性に、浮気ではないと。』

一体、切原は何を言っているのだろう。

何処の誰かも分からない人にどうやって証言してもらうというのか。
第一、相手が見つかったとして、例えその時の出来心だったとしても一夜を共にした男から“浮気してないと証言してくれ”なんて頼まれて引き受ける人なんていないだろう。

良くてビンタ…下手をすれば訴えられる可能性だってあるのではないか。
想像しただけで背筋が震えた。

こんな子供騙しの商売に引っ掛かってしまったのかと後悔をした。

これで相談料とか取られるのだろうか…。

とんだ詐欺師じゃないか。