溢れる想い出

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溢れる想い出

「ただいま」 家に帰り、真っ暗な玄関に向かい小さな声で挨拶をした。 まだ妻は帰っていないのか。 一体何処にいるのだろう…。 そう思いながら電気を点けてリビングへと歩いていく。 上着を脱ぎ、ソファーに腰を掛けると、急いで携帯を取り出した。 妻に連絡をする為だ。 一度深呼吸をして、電話を掛けた。 トゥルルルル… トゥルルルル… 繰り返すコール音だけが響き続ける。 10回目のコール音を聞いた後、聞き慣れた音声ガイダンスに切り替わった。 『ピーという発信音の後にお名前とご用件をお話下さい。』 ピーーー 「恵子、この前はごめん。あの時の事、ちゃんと説明したいんだ。これからのことも、直接話したい。帰ってきてくれないか。」 それだけを留守電に入れて電話を切った。 メールでも同じ内容を送る。 これは切原とも打ち合わせたことだった。 余計な事は言わず、とにかく会って話をする場をつくる。そう約束をしていた。
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