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「いただきます。」
何とか作り終えたカレーをお皿に盛り、手を合わせた。
「うん、美味しい。」
勿論、恵子の作ったカレーには全然及ばないが、ちゃんとカレーになっていた。
水を飲もうとグラスを手に取る。
このグラスも…恵子と一緒に選んだな…。
結婚が決まり、このマンションを契約した日に一緒にマグカップやグラスを買いに行ったことを思い出していた。
部屋の中を見渡すと、そこら中に恵子との思い出が溢れていた。
初めてこのマンションの内見をした時、恵子は風水がどうとか言いながら『ここにしたら運が良くなると思う!絶対ここがいい!』と凄く気に入ってはしゃいでいた事。
婚姻届を出した日に、このマンションでの生活をスタートした事。
お互いに少し恥ずかしがりながら幸せを噛み締めていた。
恵子が何か植えたいと言い出して、2人でプランターや土、そして苗を買ってきて、ベランダでミニ家庭菜園を始めた事。
恵子とソファーで並んでテレビを見たり、お酒を飲みながら他愛もない会話をした事。
俺が仕事で遅くなっても、待っていてくれて一緒に向かい合って夕食を食べてくれた事。
その一つ一つを思い出しながら、やっぱり俺には恵子しかいない、離婚なんて絶対に嫌だ、という想いを強くしていた。
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