動き出した嘘

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動き出した嘘

「ただいま…」 今日は電気の点いている玄関に向かい挨拶をする。 ちゃんと帰ってきてくれたんだ。 ほっとした気持ちと、緊張が高まるのを感じながらリビングへと向かう。 「ただいま。 恵子、帰ってきてくれてありがとう。」 妻はリビングの椅子に座っていた。 『おかえり。』 目線だけこちらに向けて挨拶を返してくれた。 こんなことでも嬉しいと思ってしまう。 上着を脱いで、妻と向かい合うように座る。 「改めて、この前は連絡もせず帰りが遅くなってごめん。」 『……』 頭を下げる俺を、妻は無言で見つめる。 「言い訳にしか聞こえないと思うけど… 俺、浮気はしてないんだ。」 『……』 「先ず、ちゃんと説明させて欲しい。」 『写真もあるのに…?』 「うん、誰が撮った写真かは分からないけど、あれは誤解なんだ。 抱き合っていたわけじゃない。」 『それを信じろと??』 「信じられないのは分かる。 だから、恵子に会って欲しい人がいるんだ。」 『え…?』 そう言うと俺は玄関へ向かった。
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