112人が本棚に入れています
本棚に追加
動き出した嘘
「ただいま…」
今日は電気の点いている玄関に向かい挨拶をする。
ちゃんと帰ってきてくれたんだ。
ほっとした気持ちと、緊張が高まるのを感じながらリビングへと向かう。
「ただいま。
恵子、帰ってきてくれてありがとう。」
妻はリビングの椅子に座っていた。
『おかえり。』
目線だけこちらに向けて挨拶を返してくれた。
こんなことでも嬉しいと思ってしまう。
上着を脱いで、妻と向かい合うように座る。
「改めて、この前は連絡もせず帰りが遅くなってごめん。」
『……』
頭を下げる俺を、妻は無言で見つめる。
「言い訳にしか聞こえないと思うけど…
俺、浮気はしてないんだ。」
『……』
「先ず、ちゃんと説明させて欲しい。」
『写真もあるのに…?』
「うん、誰が撮った写真かは分からないけど、あれは誤解なんだ。
抱き合っていたわけじゃない。」
『それを信じろと??』
「信じられないのは分かる。
だから、恵子に会って欲しい人がいるんだ。」
『え…?』
そう言うと俺は玄関へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!