112人が本棚に入れています
本棚に追加
『お邪魔しまぁす。』
『失礼します。』
突如連れてきた若い男女の姿に妻は驚いていた。
「こちら、宮野香さんと牧原啓太さん。」
『…??』
妻は、何!?と言った表情で俺の顔を見てくる。
『こんばんは。牧原です。
突然お邪魔してすみません。』
そう言って男性が頭を下げるのを見て、女性も慌てて頭を下げる。
男性は金色の短髪で、一見チャラそうに見えるが言動から礼儀正しい人なのだと分かる。
女性は小柄で肩くらいの茶髪。
そう…
「あの写真に写っていた人が彼女なんだ。」
俺はそういって女性を手で示した。
『え!? ちょっと意味が分かんない。
どういう事??』
『4日前、香が友達と飲んでる時に酔いつぶれてしまって、たまたま近くにいた中村さんが介抱してくれたんです。』
妻の質問に、男性が答える。
『歩くのもままならない状況で、友達だけでは手に終えなくて。
その友達が俺に連絡をくれたんですけど、俺も仕事中だったので直ぐに行くことが出来ず、無理を言って俺が迎えに行くまで中村さんに一緒に居ていただいてたんです。』
『えっと…貴方の彼女なの?
どうして介抱するのにホテルに?』
妻は他人が入ってきたことにより、言葉を選びながら話をしている。
男性に向け1つ目の質問を、そして俺の方を見て2つ目の質問をした。
『あ、はい。俺たち付き合ってて。
ホテルに入ってもらったのは、今にも吐きそうだったのと、座ってもいられないようだったので他のお店にはちょっと無理だと思いまして。
…近くにあったのがラブホテルだったので、申し訳ないとは思いましたが仕方なく…。』
『すみません…。』
女性が恥ずかしそうに小さな声で謝る。
『中村さんなら、大丈夫だと思ったんです。電話でお話しただけでしたが、誠実な人だということは伝わってきましたから。』
最初のコメントを投稿しよう!