動き出した嘘

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『…わかった。』 妻は少し考えてそう言った。 そして続けて口を開く。 『浮気ではなかったことは分かったけど、 じゃあどうして連絡してくれなかったの?』 「えっと…」 やばい、考えてなかった…。 今までの話は、切原と打ち合わせた内容だった。 “浮気ではなく、彼氏持ちの女性を仕方なく介抱していた。それも彼氏の了承済みで。” これを相手側が証言すれば、疑いは晴れるだろう。そういう説明だったのだ。 この男女も、切原が用意してくれた協力者だ。 帰り道、切原から電話が掛かってきた。 「はい、中村です…」 『こんばんは。切原です。 いよいよですね。協力者の2人は今駅に着いたみたいです。中村さんは今どちらですか?』 「あ、俺も今駅に着きました。」 『そうですか、丁度良かった。 では、改札を出た所で待ち合わせで。 金髪の男性と茶髪の女性の2人組です。 宜しくお願いします。』 「わかりました。ありがとうございます。」 『中村さん、頑張って。』 「ありがとう。」 まだ数回しか話をしていないのに、切原を信頼している自分を不思議に思った。 俺はてっきり切原が男性役をしてくれるのだと思っていた。 切原さんが居てくれたら心強いのに… そんなことを思っていた。 改札を出て辺りを見渡す。 金髪の男性と茶髪の女性の2人組はすぐに見つかった。 挨拶を交わし、簡単に打ち合わせをする。 そして、家へと向かったのだ。
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