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ここまでは打ち合わせ通りに進んでいた。
しかし、妻からの鋭い質問。
いや、よく考えれば予想できたことだ。
浮気ではないと説明することで頭がいっぱいで、連絡を取れなかった理由までは考えていなかった。
何て答えればいいだろう…
早く答えないと怪しまれる。
焦る気持ちから、冷や汗が出てきていた。
その時、女性が口を開いた。
『すみません…
それも私が原因なんです…。』
「『え?』」
俺も思わず驚いてしまったが、妻の声に書き消されてバレずに済んだ。
『私、酔っ払っててあまり覚えてないんですけど、たぶん私が中村さんの携帯奪ってしまってたと思います…。』
『…そうなの?』
女性の方を向いていた妻が俺に視線を移して質問する。
チラッと女性を見ると、女性は小さく頷き、俺に『話を合わせて』と言っているようだった。
「覚えてたんだね。
実は、宮野さんの友達から教えてもらって、途中からは俺の携帯で牧原さんに連絡してたんだ。そしたら、宮野さんが携帯を奪って話し始めて…。電話が切れてからも頑なに離さなくてね。」
『本当に迷惑かけてすみません。
俺が夜勤だったので、迎えに行くのが朝になってしまって。
奥様にもご心配お掛けして…。』
不審に思われていないだろうかと不安になりながら、それらしく話をした。
すかさず男性もフォローを入れてくれる。
妻は3人の顔を順番に見ながら暫く考えていたが、はぁ、とため息をつき、
『わかったわ。
私も写真を見て感情的になってごめんなさい。』
と表情を和らげて頭を下げた。
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