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『ちゃんと話を聞こうともせず…』
と言ったところで、妻は止まった。
また難しい顔になり、何かを考えているようだった。
次は何だ?と身構える。
『記憶がないって言ってたのは、何?』
あ…。
確かに、妻には「部長と飲んでいる途中から記憶がない」と話してしまった。
女性を介抱していたのならば、そう言えばいい。やましいことが無いのなら、“記憶がない”なんて言う必要がないのだ。
ましてや、今から「実は本当に記憶がない」なんて言える筈もない。
切原にも、妻に“記憶がない”と話したことは伝えていなかった。
「妻に説明しようとしたら、写真を見せられて…」とだけ話していたのだ。
どうしよう…。
今度こそ言い訳できない、
そう絶望した時だった。
タイミングよく、俺の携帯が鳴った。
「ちょっとごめん」
そう断って携帯を取り出す。
画面に映し出されていた名前は“切原”だった。
慌てて、「ごめん、仕事の電話だ。すぐ戻る。」と言ってリビングを出た。
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