失われた記憶

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どのくらい時間が経っただろう… 携帯を手に取っては置いて、また手に取っては置いてを繰り返していた。 妻に連絡を取ろうとするが、電話をかける勇気も、メールを送る勇気も出なかったのだ。 いくら考えても昨日のことは思い出せないでいた。 部長と飲んでいる途中で、隣にいた女性2人組が声をかけてきて、一緒に飲み始めたところまでは覚えている。 だが、俺は女性と殆ど話もしなかったし、そんなに飲んでいた訳でもない。それなのにそこからすぽっと記憶が無くなっている。 素直に話して謝るか… でも許してくれなかったら…? いや、妻ならきっと解ってくれる。 ありのままを伝えて謝ろう。 冷めきったコーヒーの最後の一口をぐいっと飲み干し、「よしっ!」と自分に気合いを入れて立ち上がった。
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