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『あなたでしょ。』
「何の事ですか?」
恵子の問いかけに、切原が答えた。
『とぼけないでよ。
夫に悪知恵教えたの、あなたでしょう!』
「悪知恵なんて、人聞きの悪い。
私は仕事をしただけですよ。」
『卑怯よ…。』
「卑怯…ですか。
私はあなたの依頼を叶えただけで、詐欺に手を貸したつもりはありませんよ。」
恵子と切原のやり取りを聞きながら、立花架純が『え、何?何!?』と1人で混乱している。
そんな立花架純には一切目もくれず、2人はお互いを真っ直ぐに見つめたまま話を続ける。
「あなたからの依頼は、“素性を隠して彼と結婚をする事”、そして2回目は“彼に浮気をしたと思わせる事”。
ちゃんと願いは叶えたでしょう?」
切原の言葉に、恵子は無言で鋭い視線を送る。
「今度は、新しい依頼人の願いを叶えただけです。」
そう、切原と恵子は前からお互いを知っていた。
恵子が“嘘つき屋”に依頼をしたからだ。
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