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全て、恵子の計画通りに進んでいた。
後は孝一郎が浮気を認めるのを待つだけだった。
しかし、ここから予想外の展開になったのだ。
孝一郎は浮気を認めなかった。
居る筈のない、“浮気相手”と“その彼氏”を見て、嘘つき屋の仕業だと気付いた。
切原が彼氏役をしなかったのは、“恵子に顔が知られているから”だった。
恵子は、何とかその“嘘”を崩せないかと穴を探した。
孝一郎と恵子のやり取りの裏で、切原と恵子の戦いが行われていたのだ。
恵子が納得しないでいたのも、ただ話の筋が通っていないからというのではなく、その話が嘘だと知っていたから。
孝一郎は“浮気をした”ということを隠していると分かっていたからだ。
本当はもっと戦うつもりでいた。追い詰めれば、孝一郎は浮気を認めると思っていた。
だから言い返す言葉を探していた。
だが、恵子は離婚を取り消した。
切っ掛けは、孝一郎の作ったカレー。
たった一度、1年以上も前に教えたカレーを彼は作っていた。
全く料理をしない彼が。
それを見た瞬間、孝一郎との思い出が一気に溢れてきて、言い返す言葉を考えられなくなった。
今回は私の敗けか。
そう思って離婚を取り消した。
孝一郎の作ったカレーを食べながら、一時的な幸せを噛み締めていた。
また、次の計画を立てないと…と思いながら。
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