隠された真実

7/12
前へ
/44ページ
次へ
全て、恵子の計画通りに進んでいた。 後は孝一郎が浮気を認めるのを待つだけだった。 しかし、ここから予想外の展開になったのだ。 孝一郎は浮気を認めなかった。 居る筈のない、“浮気相手”と“その彼氏”を見て、嘘つき屋の仕業だと気付いた。 切原が彼氏役をしなかったのは、“恵子に顔が知られているから”だった。 恵子は、何とかその“嘘”を崩せないかと穴を探した。 孝一郎と恵子のやり取りの裏で、切原と恵子の戦いが行われていたのだ。 恵子が納得しないでいたのも、ただ話の筋が通っていないからというのではなく、その話が嘘だと知っていたから。 孝一郎は“浮気をした”ということを隠していると分かっていたからだ。 本当はもっと戦うつもりでいた。追い詰めれば、孝一郎は浮気を認めると思っていた。 だから言い返す言葉を探していた。 だが、恵子は離婚を取り消した。 切っ掛けは、孝一郎の作ったカレー。 たった一度、1年以上も前に教えたカレーを彼は作っていた。 全く料理をしない彼が。 それを見た瞬間、孝一郎との思い出が一気に溢れてきて、言い返す言葉を考えられなくなった。 今回は私の敗けか。 そう思って離婚を取り消した。 孝一郎の作ったカレーを食べながら、一時的な幸せを噛み締めていた。 また、次の計画を立てないと…と思いながら。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加