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「それにしても、旦那さん凄くあなたのこと愛してますね。」
切原が、相変わらず鋭い視線を送ってくる恵子に言った。
『…そんなことないでしょ。
きっと、今回の事で懲りてるわ。』
「離婚を食い止められるなら、いくらでも出すって言ってましたよ。」
『そんなの、離婚したら印象が悪くなるとか、そんな理由でしょ。』
恵子の言葉に、切原はふふっと笑った。
“『本当に奥様のこと愛していらっしゃるんですね。』
「はい…俺には勿体ないくらいの人なんです。」”
録音された音声が聞こえてきた。
切原と、孝一郎の声だ。
“「優しくて、気が利いて、一緒にいれるだけで幸せなんです。
妻を幸せにしたいと結婚したつもりが、俺ばっかりが幸せをもらってて…
あ、すみません、こんな話…!」
『いえ、いいですよ。
2人とも幸せになれるよう、頑張りましょう。』
「あ、ありがとうございます。」”
切原は孝一郎との会話を録音していたのだ。
恵子は、驚いたような、戸惑っているような表情で目をキョロキョロとさせている。
「初めて会った人にこんな事言うくらいには愛されてるみたいですよ。
どうです?いっそこのまま本当の夫婦になってみては。」
切原の言葉に、恵子は顔を真っ赤にさせ、急に背を向けてそのまま立ち去って行く。
「九州の親戚役、いつでも承りますので!」
遠くなっていく後ろ姿に届くように、少し声を張り切原が言った。
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