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「果菜ちゃんだけでなく、朋花ちゃんの身元がバレるのも時間の問題だと思う。何と言っても、この美人姉妹、雰囲気は違えど似ているからね」
そう言って奥さんの真紀さんの肩を抱き寄せる。あ、今何気に奥さんを美人って褒めたんだ。
真紀さんも、西さんの肩に頭をもたげて嬉しそうな表情をする。
「念のため今から始まるアフターパーティーには二人の替え玉を出そう。その間に別々に事務所の人間をつけて会場から出す。そして、深夜0時過ぎの便でこれも別々に北海道を発って東京に帰す。この時間ならさすがに空港で出待ちされることはないだろう」
どうだい?と西さんは貴くんを見つめる。
でも貴くんは即座に「半分賛成ですが半分は反対です」と言い切った。
「この会場から出すのは賛成です。でも、その後うちの奥サンは俺と一緒に行動しますんで東京には帰しません」
「貴くん」
さっきから私のことを”奥サン”って言っちゃてるけど、ここは西さんの楽屋でここにいるスタッフは西さんの関係者だから私たちが入籍したことは秘密なんじゃーーー。
私の心配がわかったのか「大丈夫だ」と私の鼻を軽くつまんだ。
「わかった。会場を出た果菜ちゃんのその後は貴斗に任せるよ。」
西さんは頷いてスタッフに集合をかけた。
「無事に俺のかわいい義妹とタカトの姫を会場から出したい。よろしく頼む。そのあと、近くの店を押さえたからぱーっと飲んで食べて騒ぐぞ。遠慮はいらない、店にあるだけ全部食べてくれ。足りなければ近くの店から取り寄せよう」
スポンサーには妻を溺愛する大スターが2人もいるから心配するなと言って笑いを誘った。
西さんの言葉にその場にいた全員が笑顔で頷く。
貴くんも「いくらでも飲み食いして構わないし、お土産も付ける」と言ってスタッフさんたちを喜ばせていた。
真紀さんが「じゃあ私からは高級シャンパンの差し入れね」と言ったものだから控え室はお祭り騒ぎになった。
私たちの軽率な行動が招いた結果だとはいえ、私の過保護な夫と朋花さんの過保護な義兄によってどんどん話が大きくなってはいないだろうか。
特にこの作戦にノリノリだったのは帯同してきていた西さんの事務所の副社長さんだった。
こんなに楽しそうなハプニングに参加(?)できて嬉しいとどこかからインカムを取り出すと嬉々として先頭切って指揮し始めたのだ。
副社長の先導でミッションが動き出した。
あちこちに電話する人や慌ただしく出ていく人。
「芸能事務所だからね、こんなことはお手の物なんだ。気にしないで君たちも楽しむといいよ」
「そうよ。朋花だって慣れてるでしょ、私の影武者していたんだから。神戸の映画撮影のあと入れ替わったときは楽しかったわね」
楽しそうな西さんと真紀さんに思わず朋花さんの顔を見てしまった。
「うん、まあ色々とーー」と口を濁した朋花さん。
朋花さんも色々とあったんだね・・・。
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