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身代わりのスタッフさんの方が明らかに私より美人だったことに一抹の不安を抱えつつ、私たちは指示された清掃会社のスタッフのユニフォームに着替えた。
西さんの計画では朋花さんにマネージャーさんを、私に青山君を付けて会場から車で出すことになっていた。
でも、LARGOの事務所の人間を付き添わせるとかえって目を引くことになると貴くんが反対したのだった。
いくら何でもそこまで警戒しなくても・・・一般人だよって思ったのは私だけじゃないはず。
結局、レッドカーペットの一件で私たちと一緒にいる姿を見られた真島さんをそれっぽいワゴン車の運転席に、その助手席にLARGOのスタッフとしていつも一緒に動いている青山君を座らせて先行させ、その後清掃会社のワゴン車に乗せてもらった私たちが会場を出るという二重の仕掛けをする大掛かりな脱出作戦になってしまった。
「こんな大がかりな事になるとは」
映画並みの演出に私は真っ青だ。
「タカトさんは果菜ちゃんと青山君を一緒に東京に帰したくなかったんだよね」
脱出経験者(?)の朋花さんはくすくすと笑っている。
「そんなことないと思うけど」
そう言ってはみたけれど、本当にそうかもしれない。
「こんなことになるとはね。話がどんどん大きくなって、くらくらする。ホントに行動には気をつけなくちゃ。昨日の夕方に時間を巻き戻したいよ。こんなにいろんな人たちを巻き込んでお金を使って」
脱出前に平謝りした私たちを西さんの事務所の副社長は笑い飛ばしてくれた。
「映画みたいでいいじゃないか!」と。
「いやー、楽しい楽しい」と大喜びする副社長さんにスタッフの皆さんも「副社長、よかったですねえ」と賛同する。
西さんも「うちはなんでも楽しんじゃう、そういう事務所だから。いままでより楽しくなったのはうちの奥さんのおかげだなぁ」と笑っている。
そういう問題なんだろうか。
ちょっとだけ真島さんが苦い顔をしているような気がするけど。
それでいいのかと真島さんに確認したら
「気にしなくて大丈夫です。清美社長からも西さんの事務所の指示に従って脱出劇を楽しむようにと言われました」とお返事をもらった。
そうして私たちは出入り口で出待ちする人たちの目から逃れて会場を脱出したのだ。
みんなは心配してくれたけれど、私たちを出待ちしている人なんて本当にいたんだろうかという疑問が残る。
それから朋花さんは空港のVIPルームに、私は事務所スタッフの取ってくれたホテルにと別行動になった。
朋花さんには真島さんとの関係を聞きたかったのに。
当たり前だけど、そんな時間もなく。
今度会ったら聞かなくちゃ。
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