1716人が本棚に入れています
本棚に追加
上夕木さんーーー
「上夕木さん?大丈夫ですか?」
彼女の声にハッとする。
そうだ、何か質問されていたんだっけ。
「すみません。ぼんやりしていて」
「いいえ、こちらこそ。体調が悪い時に質問ばかりして。やはりもう少し休んでいかれますか?」
「え?あ、いえ、大丈夫です。・・・そういえば、いま何時ですか?」
「夜11時を過ぎたところですよ」
「え?」
11時?
メンバーと別れて車を下ろしてもらったのが夜7時前だったはず。
それから4時間も経っている。俺はそんなに眠っていたのか。
「すみません。ここ、入院設備がないってことは夜は閉めているんですよね?俺のために開けてもらっていて。皆さん帰れなかったってことですよね?」
「それは気にしなくて大丈夫ですよ。ちょうどね、やらなきゃいけないことがあって残業してましたから」
彼女はにこりと笑った。
慌てて周りを見渡すと、学校の保健室を思わせるようなベッドが並ぶ部屋にいて他に人の気配はない。
普段は注射などを準備するのに使われているであろうテーブルの上にはノートパソコンと専門誌や何かのレジュメが無造作に置かれていた。
俺の他に患者はいない。
彼女は何かの事務仕事をしていたようだが・・・もうこんな深夜帯だ。俺の目覚めを待っていてくれたとしか考えられない。
最初のコメントを投稿しよう!