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「ね、ね、私の格好おかしくないかな」
不安げな顔で俺の前でくるっと一回転するドレスアップした果菜の姿を上から下まで眺める。
「もちろん綺麗だ。いつもよりずっと大人っぽく仕上げてもらったな。満点じゃないか」
引き寄せて頭のてっぺんに軽く唇を落とした。
「あ、ダメ。ヘアスタイルがっ」と困った声を出すから、頬にキスしたら「ううっ、メイクが」とまた困っている果菜が面白くて吹き出した。
「もしかして、今夜は西隼人に会うからそんなに身なりに気を遣ったのか?」
「ええっと。それもちょっとだけ、ほんのちょっとだけそうなんだけど・・・もちろん一番は私の隣に立ってる人に恥をかかせてはいけないからってことで。今日も進藤さんはとっても素敵だからわたし隣にいて大丈夫かな」
不安そうな瞳で俺を見上げる果菜。
着飾ったのはほぼ俺のためなんだな。
思わず口角が上がってしまう。
「果菜はいつも綺麗で可愛いから心配する必要ない。今回は西隼人と秋野真紀の婚約披露パーティーで俺たちが主役なワケじゃないからそう気負わなくて大丈夫だ」
そう言いつつ俺は綺麗な果菜に釣り合うように多少気が張っている。
「でも、本当に私なんか連れ歩いて大丈夫?」
「大丈夫に決まってんだろ。自信持て。今日、マスコミのカメラは入らない。それに果菜だって生の西隼人に会ってみたいだろ?」
「それはそうなんですけど」
「秋野真紀もお前に会いたがっている。果菜のことは俺と社長、ヒロトとヒロトの嫁さんでガードするから心配するな」
果菜の不安はわかっている。
先日のユウキの誕生日パーティーで出会って嫌味を言ってきたモデルだかアイドルだかわからん連中のこともあるし、公の場に二人で並ぶのは初めてだからだろう。
果菜には言っていないが、女どものことは手を打ってある。
「さあ、行くぞ。そろそろ社長が迎えに来る」
「え?清美さんが来てくれるの?」
「そうだ、お気に入りの果菜の世話は自分がするって木田川さんに宣言してたからな」
「な、なんかやっぱりおそれ多い・・・。それに自分の事務所の女優さんのパーティーなのに社長さんがこちらにお迎えになんていいの?」
「気にしないで甘えとけ。社長は朝から会場にいたからちょっと抜けてくることくらい何の問題も無い」
「でも、清美さんにはこのドレス選びもヘアメイクさんの手配もしてもらってるのに更にお迎えまでなんて。一般人の私には申し訳ないって思っちゃう」
「果菜、お前さ。この間俺の北海道、東北ツアーの時にもまた社長んちで女子会してたんだろ。その時どんだけワイン飲んだんだ?その値段聞いたらきっとどれだけ自分が社長から可愛がられてるか理解できると思うけど」
果菜の顔色が変わる。
「や、やっぱりあれすごくお高いやつだったんだね。ど、ど、ど、どうしよう。あの日がぶ飲みしちゃったの」
「いいよ。どうせ社長が飲め、飲めって旨いつまみと一緒に勧めたんだろ」
こくこくと青い顔で果菜が頷いた。
「それだけじゃなく俺の留守を狙って社長に女子会だって言ってよく連れ出されてるだろ。そんだけお前は気に入られてるんだ。上手に甘えとけ」
そんな軽い感じでいいのかなと小難しい顔をする果菜を見て笑っていると社長が迎えに来たことを知らせるインターホンが鳴った。
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