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会場が暗くなりスポットライトが当たると同時に司会者に俺たちが紹介され、ヒロトの合図で演奏を始めた。
まずは大ヒットした俺たちの代表曲。
そして次は
『月明かりの翼』だ。
俺はエレキではなくアコースティックギターに持ち替える。ヒロトもドラムセットではなくパーカッションを使う。この披露パーティーだけの特別なバージョンだ。
『月明かりの翼』は果菜と自分を投影して作った曲ではないのだけれど、巷では果菜をイメージして作られたのだと思われ、最近結婚式でよく使われているらしい。
アルバムの中の一曲がプロポーズやウェディングソングとしての評判が上々でこちらの方が驚いているくらいだ。
そしてユウキのボーカルに合わせ俺もヒロトもコーラスで参加する。
公の場で俺が声を出すのは初めてってことで会場からはざわめきが起こった。
ステージ横にちらりと目をやると、西隼人と秋野真紀の満足そうな顔が。
これで借りは返したからなと真顔で視線を返しておいた。
果菜には言ってないが、彼らにはかなり世話になっていた。これはその礼ってわけで。
俺と果菜の交際が発覚して、思ったより過熱報道されていた。
騒ぎが大きくなってしまい果菜が出歩けない危険な事態にまで陥ってしまった時に彼らに助けてもらったのだ。
本当ならこの二人の婚約発表はもっと先のはずだった。
そこをうちの社長が自分の事務所の所属女優である秋野とその相手である西隼人と西の事務所に頼んで婚約発表報道を早めてもらったという裏事情があった。
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