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タカトside~
***
「あーやっぱりだ」
「そうだろうな。目立つなっていう方が無理なんだよ」
「昨日の今日でーーー大騒ぎだな」
「いつかバレるとは思ったけど、早くね?」
映画祭に呼ばれ生演奏するためにレッドカーペットを歩き楽屋で出待ちをしている俺は嫌な話に肩を落とした。
ユウキとヒロトのやり取りに俺は大きくため息をつく。
「果菜か?」
「当ったりー」
ユウキが嬉しそうにスマホをひらひらさせる。
「---でなんでバレた?」
「んー、SNSによると・・・ここに入る時にひと悶着あったみたいだよ。そこを俺たちのファンに見つかったらしい」
はあ?!
「あ、果菜ちゃんは無事だから心配いらない。真島さんが青山をガードに連れてって行ったし」
ひと悶着ってなんだよ。
だから、心配してたっていうのに。全く秋野が絡むとろくなことがない。
大体ガードに青山付けたっていうけど、その青山だって果菜の事を特別な目で見てるじゃないか。青山が狼になったらどうするんだ。
「・・・タカト、顔が怖い。ホントに果菜ちゃんが絡むとどうしようもないな、お前。一昔前なら女なんて邪魔なだけだったろーが」
「果菜は特別だって言ってるだろ」
チッと吐き捨てたところで真島さんが控室に入ってきた。
「果菜さんは心配ないよ」
俺の視線に気が付いた真島さんが先に口を開いた。
余り口数は多くないが真島さんは信頼に値する人だ。俺も黙って頷くしかない。
「しかし、果菜ちゃんって派手な子じゃないのにどうしてあんなに人を引き付けるのかね?しかもどんどん綺麗になってるし」
ヒロトがスマホをいじくりながら呟いた。
そりゃあ俺に愛されているからだろうがと声に出さず頭の中で返事をした。
俺の心の声が聞こえたのかユウキが顔を上げて俺の顔を見て「そればっかりじゃないと思う」と言ってまた視線をスマホに戻した。
何だよそれ。
「でもSNSってすごいな。嘘かホントかさっきのひと悶着がもう出てるよ」
「どういうことだ」ユウキのスマホをのぞき込んだ。
ーーーあいつ。
「ファンの心を掴んじゃったみたいだね。さすがは我らが月の姫サマ」
ユウキが感心したようにスマホの画面を次々に変えながら頷いた。
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