後編

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これは衝動? 気が逸るような、追い立てられるような、息苦しいようなそんな気持ち。 きりきりと締め上げられるような、どこか懐かしい、むき出しの感情。 「ねぇ、あの人、どっち行った?」 唐突に、友達に聞く。早々にきつねうどんを食べ終わってぼんやりしていた彼女が緩慢に向き直る。 「え?さっきの人?え~。左じゃない?」 律儀で親切な彼女は、困惑しながらも答えてくれる。 「何学部かな」 「さぁ。それはわかんないよ」 「ちょっと行ってくる」 「はぁ?え、ちょっと待ってよ、行くってどこに」 左の方。答えながら立ち上がって、ごめん、と、両手を合わせて素早く謝る。 「まぁ、いいけど。見つかる?だいぶ前だよ」 「うん。頑張る」 「頑張るって……いいよ。食器は、片しといてあげるから」 早く行きなよ。と、呆れながらも言ってくれた優しい友達にもう一度両手を合わせてから、私は食堂を飛び出した。   腕時計を見る。昼休み終了まであと15分。 とりあえず、学生の溜まり場になっている中庭の方を探すのがいいだろうか? そこで、誰か他学部の知り合いを見つけたら聞いてみればいい。フルネームは知っているんだ。手がかりがないわけじゃない。 昼休み終了まであと14分。 大きく深呼吸して駆け出した。 大丈夫。だって。 グリコのキャラメルは、1粒で300m。
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