6人が本棚に入れています
本棚に追加
結婚か…
俺は、山田智輝(やまだともき)今度の誕生日で29歳になる。社会人になってから彼女も持たず、1人で気楽に独身を楽しんでいたが、ある日、急に『結婚』の2文字が頭の片隅に浮かぶようになった。
それは、高校の時の同級生が20代前半で結婚して、もう三歳くらいの娘がいることを知ってからだ。
その同級生は、特に親しい訳でもなく、クラスも別で、何回か話したことのある顔見知り程度の友達で、高校の時も特に浮いた話も聞いた事がなく、顔も普通で恋愛とは無縁だと勝手に思っていた。
俺は、イケメンまではいかないが、まあまあ清潔感のあるすっきりした顔立ちで、そこそこ可愛い同級生の彼女もいて、高校生活は充実していた。その後、彼女とは進学とともに自然消滅してしまったが。
先週の日曜日、安い中華食堂のチェーン店で、俺は御一人様で天津飯を甘酢だれと焼き餃子を頼んで、入口付近のカウンターで料理を待ってる時だった。
入口に目をやると可愛い感じの20代の女性が、3歳くらいの小さい女の子と手を繋いで、入ってきた。店員が寄っていって対応していた。
「いらっしゃいませ、何名さまですか?」
「3名です」
「奥のテーブル席へどうぞ…」
そして少し遅れて、若い男性が1人が入ってきた。良く見ると高校の時の同級生だった。向こうから、声をかけてきた。
「おー!智輝」
「おおー、久しぶり…ひとり?」
「いや、嫁さんと子供が…」
同級生は、奥のテーブルの親子に指を指した。俺もそちらに目をやった。
「結婚したんだ…」
「ああ、そうだよ…もう5年になる…智輝は?」
「俺はまだだよ…」
「高校の時、可愛いい彼女いたよな…」
「ああ…あの後別れたよ…」
「えー、そうなんだ…じゃあな…」
「ああ…」
同級生は、奥のテーブルに行くと奥さんと子供に何か話すと奥さんが俺に向かって会釈した。俺も頭を下げて、ちょうど料理が来たので、そのまま食べるのに集中した。
食べてる時は、一度も奥のテーブルを見ることもなく食べ終わり、レジを済ませて外に出ると最後に同級生の家族の様子を見た。
そこには、ガラス越しでも、楽しそうに食事をする幸せいっぱいの家族がいた。
俺は、すごく羨ましい気持ちになり、結婚について考えてみようかと思った。
最初のコメントを投稿しよう!