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1 死にかけから始まる異世界生活
「アルト・テイル、お前を廃嫡する!」
「本気かアルバルト!アルトはまだ6歳だぞ‼」
さて…、この修羅場をどう切り抜けようかな。俺、アルト・テイルは静かに周りを見渡した。無表情な父と母、勝ち誇っている弟、激高している叔父、今にも泣きだしそうな妹に婚約者。混沌としている室内で俺は覚悟を決めていた。全てはこれからの俺の人生のために。
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今の状況を説明するためには僕が6歳の誕生日を迎える前日にまでさかのぼる必要がある。部屋で水差しの水を飲んだ瞬間、今まで感じたこともない熱さと痛み、苦しみが僕を襲った。
「う…うがぁぁぁぁぁぁ」
「おにいさま!おにいさまだいじょうぶですか?!」
「おい、今すぐ医者を呼べ!今ならまだ助かるぞ‼」
耐えきれない痛みに意識が遠のく中、僕が最後に見えていたのは泣きながら叫び続ける妹の顔だった。
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次に目を覚ました時に、僕は全てを思い出し理解した。僕は…いや、俺はどうやら転生したみたいだ。前世の名前は高岡潤、どこにでもいる本好きの高校生だった。最後の記憶は自分の部屋で本を読んでいるときに地震が起きて、目の前に本棚が迫って…なるほど、本棚に押しつぶされて亡くなったみたいだ。そして今の状況もしっかりと理解している。俺のこの世界での名前はアルト・テイル、ストラリ王国テイル家の出来損ないの長男だ。どうやら俺は誰かに殺されそうになったみたいだな。
コンコン…
「おにいさま、しつれいします…」
「おう、入ってきていいぞ」
「おにいさま!おきたのですね‼」
喜びの声をあげながらベットに駆け寄ってくる金髪の美少女。彼女の名前はエリザ・テイル。この家で唯一の味方であり、俺の妹だ。
「おにいさま、おからだはだいじょうぶですか⁉」
「ああ、大丈夫だ。それより医者を呼んできてくれないか」
「わかりました。すぐにおいしゃさんをよんで…」
「その必要はないよ」
俺がドアに目を向けると一人の男が入ってきていた。俺と同じ茶髪はキラキラと波打っており、女性のような柔和な笑顔は見る人に安心感を与えてくれる。彼は叔父のヨハネス・テイラー、エリザと同じように俺の理解者だ。
「ヨハネス様、お見舞いに来てくださったのですね」
「ああ、そんな固い言葉遣いはやめてください。私たちは家族ではないですか。それに一週間後にはアルトの誕生日ですから、たまたま早く来ただけですよ。それで、体の調子はどうですか?」
「ええ、問題ないみたいです」
「それは良かった。なにぶん、解毒の魔術は学院以来でしたから。成功して良かったです」
「ヨハネスさんが治療してくれたんですか!ありがとうございます‼」
「いえいえ…、それよりも今回の件ですが…」
ヨハネスは言葉を濁す。俺を傷つけないように言葉を選んでくれているのだろう。だけど、俺も気づいている。今回の毒殺未遂で俺を殺そうとしたのが誰なのか。
「分かっているよ、ヨハネスさん。俺を殺そうとしたのはこの家の誰かでしょ。理由は俺が魔術を使えない欠陥魔術師だから」
俺は事実を話しながら考える。これからの人生を生き抜くための方法を…。
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